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【今日のことば】「夜は次第に明けて行った。彼はいつか或町の角の広い市場を見渡していた。市場に群った人々や車はいずれも薔薇色に染まり出した」――芥川龍之介 |
【解説】
『或る阿呆の一生』より。人間には時として、運命的な出会いというものがある。それによって、周囲の世界が一変するような。芥川龍之介にとって、師・夏目漱石との出会いはまさにそれであった。
当時の芥川は東京帝国大学に在籍する一介の文学青年。友人らと発行した同人文芸誌、第4次『新思潮』に小説『鼻』を寄稿したものの、こうした独得の色合いの作品が「小説として通るかどうか」ということにさえ疑念を抱いていた。
これより前、芥川は別の同人誌に小説『羅生門』も発表していた。本人としてはかなりの自信作だったが、文壇に無視されたのみならず周囲からもけなされ、すっかり自信を失いかけていたのである。
そんなとき、彼らが送った雑誌を読んだ漱石が、『鼻』に目をとめて絶賛。ここから芥川の目の前が開け、とりまくものすべてが輝きはじめるのである。
チャンスはどこにでもある。見ていてくれる人はいる。明けない夜はない。そう信じて、諦めずにチャレンジを続けていくことが大切なのだ。
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