新・田口日記 はじめての二軍監督 「ラオウ!仙台や!」
→『早いもので、今季の前半戦が終了しました。このところ時間の経過が異様に早く感じられて、「もう7月か」と思うに至る感覚が、明らかに以前より短いのです。「あらもう戌年?」と言ってのけた義母の境地にはまだ達していません。その前半戦の締めくくり。「野球を見ていて鳥肌が立った」のはいつ以来でしょう。前日二軍の舞洲から飛び立っていったばかりの杉本裕太郎選手が、仙台での一軍戦で即スタメン起用され、満塁ホームランを放ったのです。だいたい、1アウト満塁などというチャンスで打席が回ってくること自体、舞台は整っていた、というか「持ってた」のです。フルスイングの球が伸びて伸びて、バックスクリーンに飛び込んでいく軌跡といったら。
190センチの長身で、あだ名は憧れの『北斗の拳』から「ラオウ」。この呼び名は、彼の名字が「杉本」であるという事実が忘れ去られようとしているほど、チームに浸透しています。大柄な身体で、必死でひたむきで、でもどこか少し抜けていて、それが憎めないラオウ。若手の成長が著しい近年、周りがどんどん一軍に上がっていく中で、差をつけられたような焦りがあったことでしょう。打撃不振の今シーズンは、何度もやってきては、「どうしたらいいのか」と質問をぶつけてきました。「どうしたら、試合に出られますか」ラオウの質問は、いつだって直球です。「聞かれればなんでも答える。けれど、今、そうやって必死で自分で考えて、あれこれ試している時期やろう。それを突き詰めていけばいい」僕はそう答えるのみに留めました。野球選手の成長には、「言われたことができるようになる」だけでなく、「自分でものを考えられるようになる」ことがとても大事です。あまりにも指示ばかり与えられていては、いつしか自力で状況を読むことができなくなってしまいます。僕としては、彼の自立を大きく見守る立場でありたい。そのために彼が、(なぜ監督は自分に声をかけてくれないのか)と思っていたとしても。
自ら考えながらラオウは、何度も何度もコーチ陣に居残り練習をしてもらい、さらに自分だけでも残って打ち込み続けました。スタメンはおろか、代打でも試合に出られないもどかしさをバネにしているうちに、「どうしたら、試合に出られますか」という、どこか人任せな質問が、「こうしなければ、出られない」という考え方に変わってきていたかもしれません。ちょうどそんな前半戦最後の試合は、相手が左ピッチャーでした。(ここまで、ラオウには全然チャンスをあげられなかった)とふと思い、先発ラインナップに加えたところ、ヒットを3本連続で打った彼。その試合をテレビで見ていた一軍から「すぐにラオウをこっちに寄越して」と連絡が入り、試合途中、絶好調であるにも関わらず、途中交代での仙台(一軍の楽天戦)行きとなったのですから、運命はどう転がっていくかわかりません。この話には余談があります。試合中、3本目のヒットを打ち終わったラオウを呼んだ僕が、「ラオウ! 仙台や!」と声をかけると、「ハイッ!」と元気な返事。「詳しいことはマネジャーに聞いてくれ!」と僕。「ハイッ!」とラオウ。いつだって、一軍に選手を送り出す気持ちは最高です。しかし、ふと見ると、ラオウがフットガードやエルボーガードをつけて、4打席目の準備をしているではありませんか。「おいっ! ラオウっ! 仙台や!」「ハイッ!」元気に返事しつつも何やらいぶかしげな彼。「えーと、仙台、ね? すぐ、移動してね?」「センター、ですよね?」「はい?」「センターに入るのかと‥‥」じゃあお前はセンターの詳細を田中マネジャー(もと外野手)に聞きにいくつもりやったん‥‥? 壮』
→『早いもので、今季の前半戦が終了しました。このところ時間の経過が異様に早く感じられて、「もう7月か」と思うに至る感覚が、明らかに以前より短いのです。「あらもう戌年?」と言ってのけた義母の境地にはまだ達していません。その前半戦の締めくくり。「野球を見ていて鳥肌が立った」のはいつ以来でしょう。前日二軍の舞洲から飛び立っていったばかりの杉本裕太郎選手が、仙台での一軍戦で即スタメン起用され、満塁ホームランを放ったのです。だいたい、1アウト満塁などというチャンスで打席が回ってくること自体、舞台は整っていた、というか「持ってた」のです。フルスイングの球が伸びて伸びて、バックスクリーンに飛び込んでいく軌跡といったら。
190センチの長身で、あだ名は憧れの『北斗の拳』から「ラオウ」。この呼び名は、彼の名字が「杉本」であるという事実が忘れ去られようとしているほど、チームに浸透しています。大柄な身体で、必死でひたむきで、でもどこか少し抜けていて、それが憎めないラオウ。若手の成長が著しい近年、周りがどんどん一軍に上がっていく中で、差をつけられたような焦りがあったことでしょう。打撃不振の今シーズンは、何度もやってきては、「どうしたらいいのか」と質問をぶつけてきました。「どうしたら、試合に出られますか」ラオウの質問は、いつだって直球です。「聞かれればなんでも答える。けれど、今、そうやって必死で自分で考えて、あれこれ試している時期やろう。それを突き詰めていけばいい」僕はそう答えるのみに留めました。野球選手の成長には、「言われたことができるようになる」だけでなく、「自分でものを考えられるようになる」ことがとても大事です。あまりにも指示ばかり与えられていては、いつしか自力で状況を読むことができなくなってしまいます。僕としては、彼の自立を大きく見守る立場でありたい。そのために彼が、(なぜ監督は自分に声をかけてくれないのか)と思っていたとしても。
自ら考えながらラオウは、何度も何度もコーチ陣に居残り練習をしてもらい、さらに自分だけでも残って打ち込み続けました。スタメンはおろか、代打でも試合に出られないもどかしさをバネにしているうちに、「どうしたら、試合に出られますか」という、どこか人任せな質問が、「こうしなければ、出られない」という考え方に変わってきていたかもしれません。ちょうどそんな前半戦最後の試合は、相手が左ピッチャーでした。(ここまで、ラオウには全然チャンスをあげられなかった)とふと思い、先発ラインナップに加えたところ、ヒットを3本連続で打った彼。その試合をテレビで見ていた一軍から「すぐにラオウをこっちに寄越して」と連絡が入り、試合途中、絶好調であるにも関わらず、途中交代での仙台(一軍の楽天戦)行きとなったのですから、運命はどう転がっていくかわかりません。この話には余談があります。試合中、3本目のヒットを打ち終わったラオウを呼んだ僕が、「ラオウ! 仙台や!」と声をかけると、「ハイッ!」と元気な返事。「詳しいことはマネジャーに聞いてくれ!」と僕。「ハイッ!」とラオウ。いつだって、一軍に選手を送り出す気持ちは最高です。しかし、ふと見ると、ラオウがフットガードやエルボーガードをつけて、4打席目の準備をしているではありませんか。「おいっ! ラオウっ! 仙台や!」「ハイッ!」元気に返事しつつも何やらいぶかしげな彼。「えーと、仙台、ね? すぐ、移動してね?」「センター、ですよね?」「はい?」「センターに入るのかと‥‥」じゃあお前はセンターの詳細を田中マネジャー(もと外野手)に聞きにいくつもりやったん‥‥? 壮』
[[attached(,center)]]
[]
→『』
→『』
[[attached(,center)]]
●
[[attached(,center)]]
[]
→『』
→『』
[[attached(,center)]]
●
[[attached(,center)]]
[]
→『』
→『』
[[attached(,center)]]
●
[[attached(,center)]]
[]
→『』
→『』
[[attached(,center)]]
●
[[attached(,center)]]
[]
→『』
→『』
『』 |
出展: |
発言者: |
[[attached(,center)]]
※
※
◎関連書籍、楽曲、映画(ドラマ)などなど・・・
[]
→『』
→『』
[[attached(,center)]]
●
[[attached(,center)]]
※
※
[]
→『』
→『』
“” |
【】
●
[[attached(,center)]]
※
※
●
[[attached(,center)]]
※
※