eiga.com 第88回アカデミー賞特集 受賞予想
・小西未来氏
「スポットライト 世紀のスクープ」、「キャロル」、「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」といった作品がトップを争っていた今年の賞レースだが、ゴールデングローブ賞においてノーマークだった「レヴェナント 蘇えりし者」が作品賞など3部門を受賞したことがきっかけで、流れがまったく変わってしまった。数日後に発表されたノミネートでも最多12部門を獲得。個人的には、実話の重みがある「スポットライト 世紀のスクープ」がアカデミー会員好みの作品だとは思うけれど、なにしろ「レヴェナント」はいま勢いに乗っているし、インディペンデント映画の「スポットライト」とは違って豊富なキャンペーン資金があるから、圧勝しそうだ。
ただし、監督賞と撮影賞は安泰とはいえない。というのは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は昨年「バードマン」で受賞したばかりだし、撮影監督のエマニュエル・ルベツキに至っては「ゼロ・グラビティ」、「バードマン」と二年連続でオスカーを獲得している。「レヴェナント」を特別な作品にしているのは、卓越した2人のメキシコ人アーティストの功績であるが、さすがに短期間であげすぎじゃないかと思い止まる会員もいるはず。撮影賞は、13度もノミネートされながら1度も受賞していない名匠ロジャー・ディーキンス(「シカリオ」)にあげるべきだと思う。
監督賞に関してもこれまで3度ノミネートされながら1度も受賞していないリドリー・スコット監督(「オデッセイ」)が最適だが、なぜか選外になってしまっている。となると、「スポットライト」のトム・マッカーシー監督が有力となるがあいにく作家性に乏しいので、「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」のジョージ・ミラー監督を推したい。圧巻の物語世界を生み出したのはミラー監督のイマジネーションの賜物だし、一般視聴者に人気の高い映画なので、受賞すれば授賞式はきっと盛り上がると思う。
俳優部門に関しては、ドラマチックな展開はなさそうだ。主演男優賞はディカプリオで確定だし、主演女優賞もいまのところブリー・ラーソンが最有力。助演男優賞は、実力だけを見れば混戦だけど、誰もがスタローンの復活劇を見たがっている。唯一、助演女優賞だけ本命不在だ。ここは、アリシア・ヴィカンダーを推したい。「リリーのすべて」や「コードネームU.N.C.L.E.」、「Burnt」でまったく違うキャラクターを演じ分けているのはすごいし、「エクス・マキナ」は個人的なお気に入りなので。
作品賞/◎レヴェナント ○スポットライト △マネー・ショート
監督賞/◎ジョージ・ミラー ○アレハンド ロ・ゴンザレス・イニャリトゥ △トム・マッカーシー
主演男優賞/◎レオナルド・ディカプリオ ○マイケル・ファスベンダー △マット・デイモン
主演女優賞/◎ブリー・ラーソン ○シアーシャ・ローナン △シャーロット・ランプリング
助演男優賞/◎シルヴェスター・スタローン ○マーク・ラファロ △トム・ハーディ
助演女優賞/◎アリシア・ヴィカンダー ○ルーニー・マーラ △ケイト・ウィンスレット
オスカーノユクエ
映画はシナリオが命。そんな常識が今年のアカデミー賞で覆されようとしている。なにしろ、最多12部門候補の「レヴェナント:蘇えりし者」とそれに次ぐ10部門候補の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が、脚本(脚色)賞にノミネートすらされていないのだから。
87年間の歴史において、脚本賞部門のノミネートなしに作品賞を受賞したのはわずかに7本。この半世紀では1本しかない。今年、屈指の評価を受けた2本がどちらも脚本賞ノミネートなしというのは、そのくらい珍しいことなのだ。
さらに、この2本はどちらも8つの技術部門(撮影・編集・美術・衣装・メイク・録音・音響編集・視覚効果)すべてにノミネートされている。これも過去に2作品(※1)しか例がないほど珍しく、今年のアカデミー賞はわかりやすく映像>シナリオの構図が出来上がったと言える。
2015年と言えば、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」や「ジュラシック・ワールド」、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の3本が北米興収史上ベスト10入り。「マッドマックス/怒りのデス・ロード」はサマーシーズン興行で市場を席巻し、「レヴェナント:蘇えりし者」も年始に拡大公開されると大ヒットを記録した。今回のアカデミー賞は、年間売上げが過去最高を記録する好景気に沸いた2015年を象徴するような出来事と言えるかもしれない。ブロックバスター映画がクオリティをともなって市場を席巻し、ついには賞レースまで自らの領地にしてしまった。
まるで天変地異のような状況だが、この2強にシナリオの力で対抗するのが「スポットライト 世紀のスクープ」だ。前哨戦では最重要賞ブロードキャスト映画批評家協会賞の作品賞・脚本賞を制するなど2強を凌ぐ実績を残した。ノミネート数で上回る2強がさしづめゴリアテとするなら、予算も小さな「スポットライト~」はまさにダビデ。従来の傾向通りシナリオ重視の評価がなされるのであれば、ダビデが巨人を倒すシーンがあってもおかしくない。
ちなみに、この半世紀に1本しかない脚本賞ノミネートなしの作品賞受賞作とは、97年に11部門で大量受賞した「タイタニック」。「レヴェナント:蘇えりし者」と同じレオナルド・ディカプリオ主演作という一致が興味深い。
はてさて、こんな象徴的な構図のなか、アカデミーはいったいどんな結論をくだすのか?2月29日(日本時間)の授賞式が楽しみだ。
※1…「タイタニック」(97年)、「マスター・アンド・コマンダー」(03年)
「スポットライト 世紀のスクープ」、「キャロル」、「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」といった作品がトップを争っていた今年の賞レースだが、ゴールデングローブ賞においてノーマークだった「レヴェナント 蘇えりし者」が作品賞など3部門を受賞したことがきっかけで、流れがまったく変わってしまった。数日後に発表されたノミネートでも最多12部門を獲得。個人的には、実話の重みがある「スポットライト 世紀のスクープ」がアカデミー会員好みの作品だとは思うけれど、なにしろ「レヴェナント」はいま勢いに乗っているし、インディペンデント映画の「スポットライト」とは違って豊富なキャンペーン資金があるから、圧勝しそうだ。
ただし、監督賞と撮影賞は安泰とはいえない。というのは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は昨年「バードマン」で受賞したばかりだし、撮影監督のエマニュエル・ルベツキに至っては「ゼロ・グラビティ」、「バードマン」と二年連続でオスカーを獲得している。「レヴェナント」を特別な作品にしているのは、卓越した2人のメキシコ人アーティストの功績であるが、さすがに短期間であげすぎじゃないかと思い止まる会員もいるはず。撮影賞は、13度もノミネートされながら1度も受賞していない名匠ロジャー・ディーキンス(「シカリオ」)にあげるべきだと思う。
監督賞に関してもこれまで3度ノミネートされながら1度も受賞していないリドリー・スコット監督(「オデッセイ」)が最適だが、なぜか選外になってしまっている。となると、「スポットライト」のトム・マッカーシー監督が有力となるがあいにく作家性に乏しいので、「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」のジョージ・ミラー監督を推したい。圧巻の物語世界を生み出したのはミラー監督のイマジネーションの賜物だし、一般視聴者に人気の高い映画なので、受賞すれば授賞式はきっと盛り上がると思う。
俳優部門に関しては、ドラマチックな展開はなさそうだ。主演男優賞はディカプリオで確定だし、主演女優賞もいまのところブリー・ラーソンが最有力。助演男優賞は、実力だけを見れば混戦だけど、誰もがスタローンの復活劇を見たがっている。唯一、助演女優賞だけ本命不在だ。ここは、アリシア・ヴィカンダーを推したい。「リリーのすべて」や「コードネームU.N.C.L.E.」、「Burnt」でまったく違うキャラクターを演じ分けているのはすごいし、「エクス・マキナ」は個人的なお気に入りなので。
作品賞/◎レヴェナント ○スポットライト △マネー・ショート
監督賞/◎ジョージ・ミラー ○アレハンド ロ・ゴンザレス・イニャリトゥ △トム・マッカーシー
主演男優賞/◎レオナルド・ディカプリオ ○マイケル・ファスベンダー △マット・デイモン
主演女優賞/◎ブリー・ラーソン ○シアーシャ・ローナン △シャーロット・ランプリング
助演男優賞/◎シルヴェスター・スタローン ○マーク・ラファロ △トム・ハーディ
助演女優賞/◎アリシア・ヴィカンダー ○ルーニー・マーラ △ケイト・ウィンスレット
オスカーノユクエ
映画はシナリオが命。そんな常識が今年のアカデミー賞で覆されようとしている。なにしろ、最多12部門候補の「レヴェナント:蘇えりし者」とそれに次ぐ10部門候補の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が、脚本(脚色)賞にノミネートすらされていないのだから。
87年間の歴史において、脚本賞部門のノミネートなしに作品賞を受賞したのはわずかに7本。この半世紀では1本しかない。今年、屈指の評価を受けた2本がどちらも脚本賞ノミネートなしというのは、そのくらい珍しいことなのだ。
さらに、この2本はどちらも8つの技術部門(撮影・編集・美術・衣装・メイク・録音・音響編集・視覚効果)すべてにノミネートされている。これも過去に2作品(※1)しか例がないほど珍しく、今年のアカデミー賞はわかりやすく映像>シナリオの構図が出来上がったと言える。
2015年と言えば、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」や「ジュラシック・ワールド」、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の3本が北米興収史上ベスト10入り。「マッドマックス/怒りのデス・ロード」はサマーシーズン興行で市場を席巻し、「レヴェナント:蘇えりし者」も年始に拡大公開されると大ヒットを記録した。今回のアカデミー賞は、年間売上げが過去最高を記録する好景気に沸いた2015年を象徴するような出来事と言えるかもしれない。ブロックバスター映画がクオリティをともなって市場を席巻し、ついには賞レースまで自らの領地にしてしまった。
まるで天変地異のような状況だが、この2強にシナリオの力で対抗するのが「スポットライト 世紀のスクープ」だ。前哨戦では最重要賞ブロードキャスト映画批評家協会賞の作品賞・脚本賞を制するなど2強を凌ぐ実績を残した。ノミネート数で上回る2強がさしづめゴリアテとするなら、予算も小さな「スポットライト~」はまさにダビデ。従来の傾向通りシナリオ重視の評価がなされるのであれば、ダビデが巨人を倒すシーンがあってもおかしくない。
ちなみに、この半世紀に1本しかない脚本賞ノミネートなしの作品賞受賞作とは、97年に11部門で大量受賞した「タイタニック」。「レヴェナント:蘇えりし者」と同じレオナルド・ディカプリオ主演作という一致が興味深い。
はてさて、こんな象徴的な構図のなか、アカデミーはいったいどんな結論をくだすのか?2月29日(日本時間)の授賞式が楽しみだ。
※1…「タイタニック」(97年)、「マスター・アンド・コマンダー」(03年)
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《内容要約:》
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